私たちは、味の箱舟の認定活動を始めて数年になります。その中から2008年と2007年に認定した品目のご紹介します。
2008/10/31 認定
赤ねぎ スローフード茨城 主な産地:旧桂村(城里村)
ゆうこう スローフード・長崎 主な産地:土井首地区・外海地区
2007/8/3 認定
長崎はくさい(唐人菜) スローフード長崎 主な産地:長崎市西山木場地区赤ねぎ スローフード茨城 主な産地:旧桂村(城里村)
『赤ネギ』は旧桂村が発祥の地であり、すでに明治時代には栽培が行われていたと言われている。葉鞘が赤紫色に発色する分けつ性の強いネギで、土質や栽培管理の違いによって品質は異なるが、旧桂村の沖積土地帯は栽培に適し、品質のよい『赤ネギ』が生産されている。
その中心に なっている城里村地域の生産者は「レッドポアロー研究会」を組織し、在来種の維持と高品質な赤ネギの生産に努めている。 ネギは自然交雑を起こしやすく、在来種を維持するためには原種の適切な管理が必要であることから、園芸試験場は現地からの依頼を受け、昭和59 年に純系維持のための採種を開始し、現地にこれを戻してきている。現在は「レッドポアロー研究会」による独自の採種が、交雑を避ける注意が十分払われて行われており、長期的に純系の維持を可能とする体制が整っている。
ゆうこう スローフード・長崎 主な産地:土井首地区・外海地区
「味の箱舟」には、世界中の「味の箱舟(アルカ)」委員によって定められた5つの認定基準と3つの禁止事項があります。日本でも、それを踏まえながら、国内の「味の箱舟」学術委員会が中心になって認定品目を検討していきます。
スローフード協会の各コンヴィヴィウムの皆さんが強い想いをこめて推薦するこれらの食品は、かけがいのない地域の宝物です。地元の皆さんや生産現場の人たちと手を取り合いながら、次世代に引き継いでいきましょう!
長崎はくさい(唐人菜) スローフード長崎 主な産地:長崎市西山木場地区
(伝統的生産地・長崎市内)
長崎料理に、欠かせないのが「長崎はくさい」であり、冬の鍋物に出ると郷土を感じさせてくれる。「長崎はくさい」は、古くから中国との交流が盛んだった長崎において、近郊では「唐人菜」と呼ばれるターサイや山東菜などが作られていて、それらのなかから、外観・品質の優れた新しいタイプの品種が生まれた。
それが好評を博して近郊から県外にまで広まったが、谷あいで交雑しにくい地形の長崎でのみ「長崎はくさい」本来の品種系統が守り育てられている。他の白菜と比べて結球せず、葉は立ち外開きになる。早生・晩生があり、葉色は黄色がかった緑色でシワが入り、晩生ほど濃緑とシワが顕著になる。栽培農家が減少し、種子の保存が難しくなってきている今日、栽培面積の減少を憂う有志が発起人となり、市も巻き込んだ原種の保存活動が展開されている。
野口菜(水掛菜) スローフードとちぎ 主な産地:日光市野口地区 5戸
「野口菜」は、冬期に水を掛け流しながら栽培することと日光市野口の地区名に由来している。品種は、アブラナ科の冬菜で、気温の低くなる時期に栽培するので病気の発生はほとんどない。
室町時代から栽培されていたとも言われるが、1600年頃、日光東照宮造営のため久能山東照宮から来た人たちによりもたらされたというのが通説。
【野口菜のサラダ】
昭和10年から15年には15haの面積があり、冬場の野菜として貴重な存在で、おひたしや浅漬けにする。正月には雑煮に用いる。
日光連山のきれいな水が湧き出るところでしか栽培できない。 今市地震、その後の度重なる台風などにより、湧水確保が困難となり栽培農家・面積が減少した。
スローフードとちぎとしても現地視察すると共に、今後ともこの水掛菜をはじめ貴重な地域稀少食材の保全に取り組んでいく。 なお、栽培地元では、生産者4人で保存のための組織をつくって継承しょうとしている。
又、新たな料理法として、「しゃぶしゃぶ」、「水掛菜ご飯」、「サラダ」、「ゴマ和え」
などのメニューで、一般消費者への消費拡大を図っている。
札幌黄 スローフード・フレンズ帯広 主な産地:札幌市が中心
真の農産業としての北海道タマネギの発祥は明治11年(1878年)のブルックスにより「イエロー・グローブ・ダンバース」栽培から始まる。 札幌黄の先祖はこの恐らくこのアメリカからもたらされたイエロー・グローブ・ダンバースであり、ブルックスの持参した種子から今日に至るまで、血統が連綿と連なっているものと推察される。
札幌市内各区での街づくり支援事業の中で取り上げ、特にタマネギ生産量の多い東区では街づくりの中心的なテーマとして札幌黄を位置づけた事業を計画しているほか、同市北区の「スローライフ イン24」、同市西区の「美味しいエコフェスタ」など各イベントで札幌黄を食材とした料理の試食を通して市民に普及、啓発を行っている。さらに、札幌消費者協会、学校給食栄養士会、食生活改善推進協議会など関係団体との連携により札幌黄を使った料理メニューの開発を行い、普及・推進を図っている。
オニオンスライスや、オリゴ糖類が特徴的に多く含まれており甘みが出る煮込み料理などに向いている。
谷田部ねぎ スローフード若狭おばま 主な産地:福井県小浜市口名田地区谷田部集落
古くに中国から伝わったともいわれるが、京都の九条ねぎがもとになっているとの見方が一般的だ。その特徴は、やわらかい軟白部をつくるため、8月の定植時に伏せて植え、株元が釣鐘状に曲がること。曲がって伸びることで、甘味が強くなり、内部に粘液物質が多く、味わい深いねぎができる。
同じねぎを植えても、気候・土質の関係から谷田部以外ではいいものができないため、生産量に限界があるなか、「谷田部ねぎ生産組合」が保存、普及活動をしている。採種も組合が受けもっている。
小浜市では「御食国若狭おばま食文化館」が地域食材・食文化の発掘・保存活動をおこなっているが、谷田部ねぎの料理の伝承は最重点に位置づけられている。
鯖街道で知られる小浜の名物、鯖とねぎのぬたには谷田部ねぎが欠かせない。
まさかりかぼちゃ スローフード・フレンズ帯広 主な産地:北海道
明治11年に米国から導入された「ハッバード、Hubbard」が札幌農学校(現在の北海道大学)で栽培され、夏期に冷涼な気候に適したことから、寒地や寒冷地に定着して多くの地方品種を派生した。
果実はラグビーボール形で果皮が極めて硬く、果肉も硬く、粉質で貯蔵性が優れ、寒冷地で栽培されたが、極晩生で結果数が少ない。この地方品種の中から自然に選抜された「まさかりかぼちゃ」は果実を割るのにまさかり(鉞)を使うほど果皮が硬いことに因んでおり、長期貯蔵ができるので北海道では広く栽培され、高貯蔵性品種の育種素材としても利用されてきた。
北海道では昭和30年代まで広く栽培されていたが、最近は自家用及び沿道での好事者向けに栽培される程度で、その正確な面積は不明である。各地で販売されている「マサカリ」カボチャは果形、果色、食味が雑ぱくであり、従来の系統は消滅したともいわれる。
プラスティックのように硬い皮が特徴。昔は、この皮をまさかりで割って食べたそうだ。しっかりと味をつけて食べる日本南瓜タイプに対して、西洋南瓜は、甘みがあり、ホコホコしているため、蒸しただけで味をつけずに食べる。特にこのまさかりかぼちゃはくせのない味で、開拓の頃にそのまま蒸かして主食として、おかずをのせて食べていたそうだ。現在、流通しているカボチャのような、くどさがなく、さっぱりしている。好評の一因かも。
強度の粉質持続期間が長い。いわゆるぼけにくく、極めて貯蔵性がよい。また、硬外皮なので、冷めたときは、そのままストーブで暖めることができるので香ばしく美味しく食べることができる。